あなたの傍らで ぼくは自分の名を見いだした
遠く隔たった塩の下に長いあいだ隠されていたぼくの名
ぼくはもはや熱によってかすむことのない目を見いだした
そして影を貫いてくる火炎のようなあなたの笑いによって
ぼくは昨日の雪のかなたにアフリカを取りもどした
十年わが愛
かけら
それも幻影の朝 欠片となった考え
そしてアルコールで満たされた眠り
十年そして世界の息がぼくにその苦しみを注いだ
この苦しみは現在を明日の香りで満たし
愛をかぎりのない大河にする
あなたの傍らで ぼくは自分の血の記憶を見いだした
そして日々のまわりには笑いの首飾りを
よみがえった喜びにきらめいている日々を。
〜登坂雅志訳･編｢アフリカ詩歌選 愛と自然と女性の詩と｣(花神社)より〜
【MEMO】誰かがそばにいてくれることで、喪失感と孤独から抜けだすことができるのでしょうか。誰かの愛によって、自分が自分であることを取り戻すことができるのでしょうか。この詩を読むと、愛を信じたくなります。詩人の登坂雅志(1946･昭和21年〜)の訳注によると、ダヴィド･ディオップ(1927〜1969年)はセネガル人の父とカメルーン人の母から生まれ、病気がちだった生涯の大半をフランスで過ごし、ダカール沖の飛行機事故で夫人と共に亡くなったということです。
アフリカの詩歌（登坂雅志・訳）は他に
存在の詩６「風」へ
たましいの詩７「カサラ」へ
たましいの詩８「わたしは詩を作ってます」へ
人生の詩７「父親が旅立つ息子のために神の加護を祈り・・・」へ
愛の詩１｢あなにやし」へ
愛の詩２｢歌に生き愛に生き｣へ
愛の詩３｢荒れ狂う 荒れ狂う夜！｣へ
愛の詩４｢あなたが年をとって｣へ
愛の詩５｢夕方の三十分｣へ
愛の詩６「夜が静かなので｣へ
愛の詩８「一つの星をうたおう」へ
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