荒れ狂う 荒れ狂う夜！
あなたと一緒なら
嵐の夜も
うたげ
華麗な宴になるものを！
港に抱かれたこころには
風なんかとるにたりない
羅針盤も捨て
海図も捨て
楽園にただよう
海 ああ！
今宵 あなたのなかに
碇をおろすことができるなら
〜岩田典子｢エミリ･ディキンスンを読む｣（思潮社）より〜
【MEMO】オペラのヒロインなら、アリアで感情と意志を歌い上げた後、決然と行動に走るのでしょうが、現実にはそうドラマチックな生き方ができるものではありません。エミリ・ディキンスン(Emily Dikinson 1830〜1886)が生きたのは、女性が自由に発言できなかった時代です。強い社会的な抑圧のもと、女性が性愛はもちろん自分をありのままに出すことは厳しく規制されていた時代です。しかし、そのような時代に、エミリはなんと現代的な女性だったのか、なんと素直で健康な心を持っていたのかと、この真っ正直で狂おしい愛の詩を読んで思います。保守的なアメリカの田舎で、エミリはじぶんの気持ちを抱えてどう生きていたのか。胸に吹き荒れる嵐を思うと、彼女を抱きしめたくなります。
エミリ・ディキンスン（岩田典子・訳）の他の詩は
夏の詩２｢正午 二匹の蝶が出かけ｣へ
秋の詩２｢その名は 秋｣へ
人生の詩４｢小石はなんて幸せなんだ」へ
愛の詩１ ｢あなにやし」へ
愛の詩２｢歌に生き愛に生き｣へ
愛の詩４｢あなたが年をとって｣へ
愛の詩５｢夕方の三十分｣へ
愛の詩６「夜が静かなので｣へ
愛の詩７「あなたの傍らで」へ
愛の詩８「一つの星をうたおう」へ
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