正午　二匹の蝶が出かけ　 　エミリ・ディキンスン
　　 　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　訳/岩田　典子

正午　二匹の蝶が出かけ

畑のうえでワルツを舞った

それからステップを踏んで天空を横切り

一条の光のうえで休んだ



それから　一緒に

輝く海へ向かった

でもまだ聞いてない

どこかの港に入ったとは


遠くで鳥が　話したかもしれない

フリゲート艦や商船が

エーテルの海で会ったかもしれない

でもわたしには　何も知らせがない

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　


　　　　　　　　〜岩田典子｢エミリ･ディキンスンを読む｣(思潮社)より〜

【MEMO】明るい初夏を思わせるエミリ･ディキンスン(Emily　Dikinson　1830〜1886)の詩です。二匹の蝶が楽しそうに舞って海へ向かい、強い陽光のなかで蝶の姿は見えなくなった。それだけなのに、不思議な感覚が残る詩です。永遠に明るい光のなか、二匹の蝶は今も海のうえを漂っているような気がします。岩田典子(いわたみちこ)著の｢エミリ･ディキンスンを読む｣は、アメリカ19世紀の詩人、ディキンスンの生前ほとんど発表されなかった千数百篇の詩から32編を選び、訳詩と原詩、詳細な解説で、ディキンスンという詩人の心を解き明かしています。この謎かけのような詩の魔法もそのままに。

エミリ・ディキンスン（岩田典子・訳）の他の詩は
秋の詩２｢その名は 秋｣へ
愛の詩３｢荒れ狂う　荒れ狂う夜！｣
人生の詩４｢小石はなんて幸せなんだ」



夏の詩１｢夏の光」へ
夏の詩３｢飛び鮎｣へ
夏の詩４｢沢の蛍」へ
夏の詩５「青葡萄」へ

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