秋 鈴木ユリイカ
わし つぐみ
鷲は言った 鶫は言った
──俺たちの宝はなにか?
とち
野うさぎは言った 橡の木は言った
──俺たちの宝はお日さまさ
お日さまは恥ずかしそうに海の中でお顔を洗い
お日さまの中の男と女は鏡のように見つめ合い
手を取り合って海のうえを都市のうえを歩き
大地にきらきらするものをばらまいた
お日さまは言った
──俺たちの宝は空さ
空は何も言わなかった
一万年 十万年 千万年 そして今日も
空は何も言わなかった
秋がやって来て
くるぶし
子どもの踝まで青空が降りてきた
〜鈴木ユリイカ「ビルディングを運ぶ女たち」(思潮社)より〜
【MEMO】詩人は見えないものを見て、それを詩にします。自身の感動をさらに美しい言葉に変えます。秋、あまりにきれいな青い空を見ると、わたしはこの詩が読みたくなります。読めば、あらゆるものを染めてしまう青い空の向こうにある、宇宙や生命という目に見えないものへのあこがれが強くなるのです。自由にイマジネーションをひろげてくれるこの詩もまた、わたしにとって宝物です。鈴木ユリイカは現在、世界中の詩を声を出して読み鑑賞する「AUBE面白詩の会」というユニークな集まりを主宰しています。
鈴木ユリイカの他の詩は、
存在の詩3「すばらしい手」へ
「AUBE面白詩の会」の情報は、
あざみ書房の同人誌情報のコーナーへ
秋の詩2「その名は 秋」へ
秋の詩3「素朴な琴」へ
秋の詩4「われをつれて」へ
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