予感

丸テーブルの下
魚は目覚めたばかり
そっときらめき
波が打ち寄せる
きのうの影ときょうの光
夏　三番目の朝

風とともに動いた雲も
固い桃にみなぎる鼓動を聴く
帯電した水の匂い
草の刃は立つ
砕ける白い豹たち

すっぱい泡をひと口飲んで
試してみること
小鳥の羽音に振り向いて
信じること
理由はいらない





大砲の用意を

道化師が見あたらない
座長は彼が死んだって言う
馬に蹴られても走っていたやつが？
ワイン一びんの貸しがあるのに
いや正確にいえば一本とハーフ

産まれたこどもたちは
意識的に名づけられます
まっさらな刃物は
さやに収められます
帽子の中のお菓子のように
人間は簡単に消えません

フルフルって呼んでた
あいつの子供の時の名前
誰か知っているか？





ずいぶんと時間がかかった

この体は　
木になるのか岩になるのか　この心は
朝方に山肌を降りる白い霧になるのか
生きていく　死んでいく　ここで

いろんな雨に打たれよう
出会いも
出会わなかったこともつながっていく
孤独を食べ　縮んだ縄をしごき
奪い　与え　営みを繰り返し
あなたの奥底にある石は
青く光っています

結界から足を踏み出すと
無造作に殺されるいのち
無数のチューブでつながれるいのち
宇宙を背負ういのち
その目で　見届けましたね　





いまここで

ある者は城外に出た
ある者は荒野をさまよった
ある者は洞窟にこもった
独りで声を聴いた
いまでなく
ここでなく
終末の時代はつづく

人と音に埋もれる通り　杭うつ高層ビル
脇をぬう電車　夜を進む車の筋
高架下ひしめく焼鳥屋　けむる路地　
いつかはこの地も乾くのか　　
いまここで　
かってここで
異星の谷はつづく

どこかで生まれた赤ん坊の声が空を裂く
何かを求める声がわたしを引き戻す
二十年前　四十五年前　もっと前
わたしの原点はどこか
わたしは何を託され何を託すのか
からだは毎晩死んだように眠り
生き返るように目覚める　　
北の国で南の国で　今もかってもこの先も
光と雨は降り注ぐ

原点にいて感じるすべてと
原点から遠く離れて感じるすべてを
いまここで



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